金属結合と金属結晶

【金属結合】

金属の原子が多数で結合するときは,各金属原子が価電子を放出して陽イオンになる。陽イオンどうしは反発しあうので,直接結合することはないが,放出された電子によって,陽イオンどうしが集まる。この電子は陽イオンの間を自由に動き回ることができるので〔 自由電子 〕という。金属結晶の金属光沢,大きな熱伝導性と電気伝導性,展性・延性といった特徴は自由電子によるものである 

 
 

【結晶質と非晶質】

 構成粒子が規則正しく配列した固体を結晶質という。固体でも構成粒子の配列に規則性がない物質を非晶質といい,このような物質では構造に周期性がない。このような状態を無定形あるはアモルファスという。金属を高温で融解してから急激に冷やすとアモルファス金属が得られる。これは液体の状態の構造が凍結された物質と考えることができる。優れた磁性などがみられる。金属以外にも酸化物,半導体,高分子などで非晶質が見られる。

 

【金属の結晶】

金属原子が,金属結合によって規則正しく配列してできた結晶を金属結晶という。その中で規則正しく繰り返されている粒子の配列構造を結晶格子という。金属結晶の構造の主なものは,下図の3種類である。結晶格子中の立方体を単位格子という。六方最密充填は3つの単位格子からなる結晶格子である。

 
 

体心立方格子 

 

面心立方格子

 
六方最密充填 
 

例題 右の金属の結晶について,以下の問いに答えよ。

1 a,bおよびcのそれぞれの配列は何というか。

2  a,bおよびcのそれぞれの結晶構造において,1個の原子に何個の原子が
 接しているか。

3 鉄は,cの配列をとり,単位格子の1辺の長さが2.9×108cmである。鉄
  の原子を球とみなすと,その半径は何cmか。√3=1.7                           
 
 

4 問3における鉄の密度は何g/cm3か。ただし,アボガドロ定数NA=6.0×1023/molFe=56.02.93=24.4とする。




1 a 面心立方格子  b 六方最密充填  c 体心立方格子

2 a 12  b 12  c 8

3 r=√3/4×a1.7/4×2.9×1081.23×1081.2×108cm

4 体心立方格子なので,粒子数は2個。このときの体積は,(2.9×108)324.4×1024cm3〕。Fe1mol(=6.0×
 1023
個)で56.0gなので,Fe2個では,56.0×2/(6.0×1023)g〕密度は,{56.0×2/(6.0×1023)}/24.4×1024
 =7.657.7g/cm

 


(課題)
 体心立方格子の充填率(68%)と面心立方格子の充填率(74%)を求める過程を示せ。それぞれ,単位格子の一辺をa,粒子の半径をrとして考えよ。

 

例題 次の(ア)〜(エ)の結晶を,それぞれ@Eの中からすべて選べ。

(ア) イオン結晶  (イ) 分子結晶  (ウ) 金属結晶  (エ) 共有結晶

@ アルミニウムAl  A 銅Cu  B 二酸化ケイ素SiO2 C ナフタレンC10H8

D ドライアイスCO2 E 塩化アルミニウムAlCl3

 

(ア) E  (イ) C,D  (ウ) @,A  (エ) B

 

例題

 次の結晶に関する表を完成させよ。それぞれの空欄に入る語句を指定された項目より選んで記号で答えよ。ただし,それぞれの物質が結晶化した場合で答えよ。

 

構成粒子  @原子 A分子 B電子 C陽イオン D陰イオン

    結合の種類 @イオン結合 A共有結合 B金属結合 C分子間力

    融点    @非常に高い A高い B低い C様々

    電気伝導性 @良導体 A絶縁体 B絶縁体(水溶液や融解液にした場合良導体)

    機械的性質 @強い・硬い A延性・展性がある B弱い・軟らかい C強い・硬い・もろい 



 

結合の強さ:共有結合>イオン結合>金属結合≫水素結合>ファンデルワールス力